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「キングペンギンって、なんであんまり泳がないんでしょうねぇ?」
動物園や水族館のスタッフから、最近、そういう質問をよく受ける。 たしかに、動物園や水族館のキングペンギンは、あまり長い間プールで泳がない。ちょっとバシャバシャやって、すぐにプールから上がってしまうことが多い。 「野生のキングペンギンはどうなんですか?」という質問もよく受ける。 例えば、インド洋のクロゼ島で子育てするキングペンギンの親鳥たちは、片道千数百キロメートル以上も海上を移動して、食べものを探している。特に、最近は、なかなか食べものがないので、さらに遠くまで泳いでいくものも少なくないという。 だから、キングペンギンは「泳がない」ということはない。たぶん、今の動物園や水族館のプールには、キングペンギンたちの「泳ぎたい」という気持ちを刺激する「何か」が足りないのではないか?私は、そう考えている。 |
キングペンギンだけではない。今知られている18種類のペンギンたちは、みんな「泳ぎと潜水が大好き」なのだ。
ペンギンというトリは、一生の70%以上の時間を「海上ですごす」といわれている。かれらが陸に上がるのは、「換羽(1年に1回ある羽毛の生え換わり)」や「繁殖(子育て)」等、特別な事情がある時だけ。 そもそも、ペンギンが人間のように、陸上で直立して歩くのは、脚がおしり近くについているため。これは、水中で脚が水の抵抗をうけてスピードが落ちてしまわないように、じゃまな脚を体の後ろにもっていったからだと言われている。 それほど、ペンギンは「海の生活中心」にできている生きものなのだ。 |
実は、海中や海上で野生のペンギンを撮影するのは、とてもむずかしい。しかし、それはペンギンが人間をこわがっているからではない。ペンギンから見ると、人間はあまりにも「動きがにぶくてつき合っていられない」からだ。
だから、マゼラン海峡で船の上から撮影したマゼランペンギンの「イルカ泳ぎ」や群れの写真は、とても珍しくラッキーだったと言える。マゼラン海峡のマゼランペンギンたちは、この有名な海峡を縦横に泳ぎ、厳しい寒さと強風にたえながら暮らしている。 海に出てしまったペンギンは、人間にとって「追跡しにくい謎の生きもの」に変身する。私たち人間がこのトリに魅力を感じるのは、この生きものが「海のトリ」だからなのだ。 |
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| ◇プロフィール | |
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上田一生(うえだ かずおき)
1954(昭和29)年、東京都出身 國學院大學文学部史学科卒業 現職:目黒学院高等学校教諭(教科担当:地歴公民科) ペンギン会議創設メンバーであり、今なお研究員として幅広い活動を行っている。 主な著書に 『ペンギンコレクション』平凡社、1998年 『ペンギンは歴史にもクチバシをはさむ』岩波書店、2007年 など |