すべてのお父さん、お母さんに読んでほしい1冊

ちいさなうさこちゃん(1964)
ディック・ブルーナ 文・絵
いしいももこ 訳











うさこちゃんの誕生にまつわる物語です。
赤い屋根のおうちに仲良く暮らす2匹のうさぎ、ふわふわさんとふわおくさん。



ある日、ふわおくさんのもとに天使が舞い降りてきてこう告げます。
「よく おききなさい あなたに じき あかちゃんが できますよ」
そうして誕生した女の子を、ふわふわさんとふわおくさんはうさこちゃんと名付けます。
うさこちゃんのもともとの名前は、原書のオランダ語で、ナインチェ・プラウスと言います。ナインチェは「うさちゃん」、プラウスは「ふわふわ」という意味です。ふわふわさんとふわおくさんの子どもって感じがしませんか?二人は、たくさんたくさん相談をしてこの名前を決めたのではないかと、思うのです。



さて、お話の紹介にもどりましょう。
うさこちゃんの誕生を聞きつけ、動物たちがお祝いにやってきます。
お祝いにやってきたふとったうしは、丁寧におじぎをしながらこう言います。
「ふわおくさんに ふわふわさん おはようござます あかちゃんが おうまれになって おめでとう」



しばらくして、おおぜいのおきゃくにくたびれて、うさこちゃんは「こっくり こっくり じきにおめめも ふさがりました」
それに気づいた、おきゃくの動物たちは、静かにおうちへ帰って行きます。
これらのシーンは、うさこちゃんが大事に見守られながら成長していくだろうことを、予感させてくれます。


もちろん、『ちいさなうさこちゃん』は子どものために描かれた絵本です。
でも一方で、子どもを授かり親となるすべてのお父さん、お母さんに向けられた作品のようにも思われます。
この絵本のしめくくりのことば。おきゃくの動物たちが去ったあとです。
「そして うさぎの とうさんが おうちの まどを しめました」
気づきましたか?これまで、作品の中でずっと「ふわふわさん」と呼ばれていた一匹のうさぎが、「とうさん」*と呼ばれていることに!!
「お父さん、お母さんになるって、こういうことなのかもしれないな」そんなことを感じさせてくれるラストシーンではないでしょうか?
* 原書のオランダ語では、これまでのシーンとおなじく「ふわふわさん(meneer pluis)」と表記されている。翻訳を手がけられた石井桃子氏が日本語に訳す際に、五七調のリズムを考慮し、「とうさん」とした。今となっては確かめるすべがないですが、リズム以外にも、この訳の違いには、大切な意味が込められているように思います。